単独行のこころ6(山の音)
2018年2月28日 20:50| カテゴリ:東京の山
ある日、僕は独りで山を歩いていた。
すると後ろから足跡が追いかけてくるのである。
えっ?と思って振り向くけど、誰もいない、
変だなぁ〜と思いつつ、また歩きはじめると
やはり後ろから人がついてくる音がする。
???
不思議に思ったが、どうやらこの足音は自分自身の足音のようだ。
妙な話しではあるが、自分の足音が、山のどこかで反射して自分に跳ね返ってきているようだ。
バックパックを背負っている影響で音の伝達が変な事になっているのかもしれない。
こんな経験は良くある。
本当に不思議な現象だ。
妖怪のしわざでは無いか・・などと考え苦笑いしてしまう事もあります。
また別の日も僕は独りで山を歩いていた。
すると今度は正面からガサガサと音がするのである。
びっくりして前方を凝視するが、何もいないのである。
ただガサガサ!バキバキ!という音が遠ざかって行く。
姿は見えないけど大型の野生動物が逃げていったんだろう。
こっちはびっくりしたが、あっちはもっとびっくりしたんだろう。
いずれにせよ、あっちが逃げてくれて良かった・・とほっと胸をなでおろすのは言うまでもない。
またこんな事もある。
その日も僕は山を独りで歩いているのである(毎回の事だが)
すると後ろからバキッ!!と大きい音がして驚く。
今度こそ熊の襲撃かと思って身構えるが、なにも起こらない。
シーンとしている森の中なのである。
息を殺してじっと森を観察していると、
どうやら先ほどの音はドングリが落ちる音のようだ。
なんだ、熊じゃなくてドングリか・・驚かすなぁ〜と苦笑する。
そしてドングリの落ちる音に驚く自分を恥じると同時にオカシクも思うのである。
なんて臆病で滑稽なんだろう・・と。
そして山の中を歩いていて一番驚くのが鳥である。
シーンとした森の中を歩いていて、いきなり目の前の茂みからけたたましい音をたてて
飛び立つのである。おどろくなんてもんじゃない、思わず変な声が出てしまうぐらいだ。
山の中は静かな様でいて、
実はいろんな音がある、
沢の音や、風で木の葉が揺れる音だけではない。
虫が飛んで来る音もある、蛙が鳴いている事もあるし、飛行機だって飛んでいるのである。
遠くから人の声だってするし、お寺の鐘の音、麓の街の小学校のベルの音だって聞こえる。
単独行をしていると、特に音に敏感になる・・と誰かが言っていたな・・
坂を登りながら、そんな事を考えていると、
前方から人の声が聞こえてきた。
バリエーションルートを歩いていて、前方から人の声がすると言うのは
そこが安全圏(一般登山道)に合流する事を意味する。
遠くからきこえる人の笑い声に、どことなく安心感をおぼえる。
この音は好きな音だな・・
汗を拭いながら、さあもう少し頑張ろうか・・
そんな事を思いながら、坂を登ってゆく僕なのである。
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