単独行のこころ5(頑ななこころ)

もうずっと何年も前の事だ。

秋枯れの季節、奥多摩のとある稜線上でばったり仕事で知り合った人に出会った。

お互いに指を指し合って「なんでこんな所にいるんですか!!」と言い合う。
彼は僕と同じ歳ぐらいのサラリーマンだ、
その彼が、そんなにイケメンと言うわけでも無いのだが、
女の子2人と一緒に歩いていたのには少し驚いた。

話しも終わってじゃあ別れようとなったとき、
彼は僕にさも当然の如く言った
「一緒に歩きましょうか」

だが、僕は彼の誘いを断る。
頑なに、独りでいる事をまもり通そうとする。
そうだ、私は偏狭な単独行者なのだ。

だが、ずっと独りで歩き続けてきた人間が
一度でも人と歩けば、
今までの自分では無くなるのでは?と思ったのだ。

独りでいる、この無垢な時間は私にとって黄金の価値をもつ、
その黄金に小さな亀裂が入る事を恐れたのか。

実は、そんな事は無いのであるが、
つまり、要するに、
僕には人と山を歩くための、心の準備がまるで出来ていなかったのである。

僕は独りで歩く事が好きだから・・と言い彼の誘いを断ったのだが、
進む方向は同じなのだ。

それから、僕は写真を撮影しながら、のんびりと歩いて行ったのだが、
ゆく先々で彼らと出会う。
そのたびに思わず苦笑いが出てくるし、

一緒に歩けないと断っておきながら、
その人たちの後からついてゆくような形になってしまった。

なんとも気まずい。
彼らは何も思ってないだろうが、僕はとても窮屈な気持ちになった。

そこで、彼らが展望台で遠くを眺めている間に、
脇をすりぬけて、先へと進む事にした。

山の中で得た、つかの間の自由の空気。

美味しいはずのこの空気だが、なぜか少し冷たくも感じた。

縦走路の最後の山に僕が到着して、
そこでコーヒーをドリップして飲んでいたら、
彼らが遅れてやってきた。

彼らはもう、僕には一瞥もしない。
先に下山する彼らの前で、僕は美味しそうにコーヒーを飲んだ。
コーヒーは美味しかったが、
なぜかからっ風が心の隙間に入り込んできた、そんな気持ちになった。

なぜ山でこんな気持ちにならなければいけないのか、
僕にはよくわからない。
すべては自分の偏狭な心が招いた事なんだろうけど・・

おわり



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